■オマエガキライダ。(ケン×タナ)


…勝てない。どうしても、勝てない。
ケンゾーと対戦するといつも負けてしまう。
さっきも負けてしまった。タッグだというのに…。
シングルで負けたんだったらまだしも、タッグだよ!?
この間まで欠場していたケンゾーに負けるなんて…。
その間の俺の頑張りはどうなっちゃうんだよ?
…いや、頑張ってるって自分で言うのはアレなんだけど。
でもちょっと、いや酷くプライドが傷つけられた。
しかも最後の押さえ込み、アレは何だよ!?
上からのしかかられて、両腕を押さえ込まれて。
まるで俺…女みたいじゃないか。
あいつ、ゴングが鳴っても放してくれないから俺…思わず身体をよじってしまった。
「イヤイヤ」って感じで。ああ…ますます女みたい。
そういやあの時、ケンゾー何か言ってたよなあ…。
頭がボーっとなってて、まわりもうるさくてよく聞こえなかったんだよな。
何て言ってたんだろう?…と思っていたら、控室のドアが開いてケンゾーが来た。
…ちょっと聞いてみるか。
「ケンゾー!ちょっとちょっと!」
「ん?」
「あのさあ、さっきお前…フォールした時何て言ってたの?」
「え?聞こえなかった?」
「うん」
「なんだ…聞こえてたからイヤイヤってしたのかと思った」
そう言うとケンゾーのヤツ、ニヤッて笑いやがった。
「…あ、なんだよその含み笑い!何て言ったんだよ?教えろよ!」
「…ヒミツ」
「えーっ!?何だよー、気になるだろーっ!」
「教えない…まあ、また対戦してフォールした時にでも言ってあげるよ」
「あ〜?何それ、俺がまた負けるとでも?次は絶対に負けないからな!」
「じゃあずっとヒミツのままって事で」
「…くっそー。負けなきゃわからないままなのか。でも…あーっ!もういいよ!」
俺は拗ねたような声をあげてそう言った。
「まあ…その内ね。試合じゃない時に言うかもしれない」
試合じゃない時って…訳がわからない。
「試合じゃない時ってどんな時だよ?」
「そうだなあ…たとえば今とか」
ケンゾーはそう言ってクスッと笑った。
「今?何それ?どうして?」
「だって…」
そう言ってケンゾーは俺の耳元に顔を寄せて囁いた。
ケンゾーの口から出た言葉に俺は…赤面してしまった。
「……っ!!!!バカ!お前…リングの上で…そんな事言ってたのか!?」
「いや、つい…ね。タナの顔見てたらポロッと」
「ポロッとじゃないだろ!ああもう…ササキさんとかに聞かれたらどうすんだよ!?」
「その時はそうだなあ…お前を攫って逃げるよ」
攫うだぁーっ!?ケロッとした顔でとんでもない事を…ああ、何で俺こんなヤツに…。
「今も攫いたい気分だよ」
そう言ってケンゾーは俺の腰を抱き寄せた。
「誰か来たらどうすんだよ!」
俺はフォールされた時みたいに身をよじってケンゾーの腕から逃れようとした。
「やっぱヤバい?」
「だからさっきも言っただろ!?」
「じゃあやっぱ攫おう。誰もいなきゃいいんだろ?」
そう言ってまたニヤッて笑うケンゾー…ああ、もう。
「…勝手にしろよ」
俺は吐き捨てるようにそう呟いた。
そしたらケンゾーのヤツ、ギュッって俺を抱き寄せて…耳元でまた囁いた。
優しく、身体の芯が蕩けてしまいそうな声で。
「やっぱタナは…カワイイな」
「もう…お前なんか…嫌いだぁ…」
逃れようと思えば逃れられるその腕に、俺は身を委ねてそう呟いた。
ホントは…嬉しいんだけどね。
でも調子に乗られると困るから絶対言わない。
負けて悔しかったし…ヒミツにしておこう。
ちっともヒミツになんてなってないんだろうけどね。



20020614




■サクシャ、コソーリツブヤク。

私の中のケンタナは、自身満々でキザ入ってるケンゾーに照れ屋さんのタナってパターンなんですよね。
もしくはタナ姫を小脇に抱えて掻っ攫っていく原住民ケンゾーとか…(w
某スレでの「片思いタナ」が大好きな人にはちょっと合わないかもしれませんね。ごめんなさい。

この話は5月の後○園ホールでの出来事。試合後の、メインで誰もいない控室って事で。
ああ、あの体固め(我がページでは『チン固め』という身も蓋もない名称で呼ばれています(w))…
いつ見てもたまらんわぁ…思わず歓喜の悲鳴をあげて同行者を驚かせてしまった管理人なのでした(苦笑)。
ケンゾー、頼むから他の人には使わないでね。私の中のタナ姫が拗ねるから(w






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